以前働いていた会社で上司だったひとは、ウィスキーが好きだった。
飲み会には たいてい遅れて来て、
いつの間にか席に座って、I.W.ハーパーを飲んでいた。

僕が彼に会社を辞めることを伝えたのは、会社の近くのバーでのことだった。
話したいことがあると、グループ席を抜けて、二人で話せる席へ移動すると、
実はさ、俺も話さなきゃいけないことあってさ、と笑っていた。

彼はよく笑う人だったけど、目が笑っているのを見たことがない。
物腰の柔らかさはあったけど、真面目で仕事にきびしい人だった。

会社を辞めることを伝えると、そうかそうか、とうなずいていた。
次に行く会社のことを話すと、絶対合ってるよと喜んでくれた。

彼の話も同じだった。
近いうち会社をやめる、という。
僕はいちデザイナーだったけど、彼は会社の重要なポジションにいたのでびっくりした。

辞める理由を聞くと、少ない言葉で話してくれた。
将来的に自分で会社をやりたいと思っていること。
そのためには、いまよりも経営に深く関わるポジションで仕事をしたいと思っていること。
彼が自分のことを話すのを聞いたのはそれがはじめてのことだったと思う。

僕のことをデザイナーとしてすごく信用していると言ってくれた。
「ただ、性格なのか、会議などで他のディレクターに押し切られる場面を何度かみてきた。
思った通りにやっていいんだよ。それが十分にできると思う。」

そして、真剣な表情でこう言ってくれた。
「もし俺が会社をつくったら、デザイナーとして声をかけるよ。」と。

それが彼との最後の会話だった。
そのあと人づてに何度か転職したことを聞くだけで会うことはなかった。

数年後、彼の訃報を突然聞かされ、
僕はそれからときどき彼との最後の会話のことを思い出している。

もうひとつ、ときどき思い出すエピソードがある。

仕事中、となりに座っていた彼が突然机に飛び乗って、
デスクトップPCの裏にささっているLANケーブルを引っこ抜いた。
何事かとびっくりしたら、重要なメールを誤送信したらしく、
送信した瞬間に気づいてケーブルを引っこ抜いたという。
間に合うわけないじゃん!(もちろん間に合わず送信されていた)

一度、ゆっくり飲みなかったな。
あの頃はウィスキーは飲まなかったけど、最近たまに飲むんですよ。
そういえば、I.W.ハーパーって飲んだことないな。

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